たろちんの感情の奴隷ブログ

やむを得ず社畜と化したたろちんが、お金にならない文章を思いついたときにだけ更新されるプレミアブログです。

何の映画が一番好き?みたいなトークで僕は強く「アイ・アム・サム」ということにした話

よく友達と映画の話になると「今までで一番好きな映画って何?」みたいな話になるじゃないすか。前までそういうときちょっとかっこつけた映画を言ってたんですけど、30過ぎたくらいからもう開き直って「アイ・アム・サム」って言うようになりました。こんばんは、アイアムたろちんです。


サントラもいいぞ

アイアムサムは2001年に公開されたわりと凡庸な映画の1つで、7歳の知能しかない知的障害の父親がシングルファザーで娘を育てて、娘が7歳になっちゃったときに娘のほうが賢くてやべーってなる話です。ショーン・ペン知的障害者の演技をモノホン級に上手くやったり幼女時代のダコタ・ファニングが天使すぎたことなどでプチ評価された映画です。「24時間テレビは感動ポルノ!」ってなる今の時代だったらもっとクソ扱いされてる映画だと思います。

でもこの映画を、「24時間テレビとかキモッ!」って言ってトガってた15歳くらいの僕は母ちゃんと観に行ってショボショボに泣きました。千葉の僻地のユーカリが丘ってとこの映画館で観ました。「レイトショーだから安いやん」って2人で喜んで行ったらレイトすぎて終電なくなってタクシーで帰った記憶があります。母ちゃんごめんね。

この映画の魅力がショーン・ペンの迫真障碍者っぷりとダコタ・ファニングの天才子役っぷりにあることは議論の余地がないのですが、キモになるのは「サム(ショーン・ペン)は知能はアレだけどビートルズのことは超好きなので超わかる」ということです。いわゆるサヴァン的な表現なんですが、この映画だとそこがメインではなくスパイス的に使われている。この辺が感動ポルノなのに泣いちゃう理由のひとつです。以下全ネタバレなのでアレしてください。

サムはむちゃくちゃいいやつです。スタバの障碍者枠でバイトしてるんだけど注文に対して絶対「いいチョイスだね」って言ってくれる。すぐコーヒーこぼしてテンパったりするんだけどいいやつ。そんで経緯はちゃんと描かれないけどホームレスの女性とアレして子どもが産まれちゃう。母親は産んですぐ逃げちゃうんだけどサムは喜んで娘に「ルーシー・ダイアモンド」って名前を付ける。もちろん由来はビートルズの「ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンズ」。ルーシーはサムにとってのダイヤモンドなんよ。(DVD見てると開始5分くらいのここでもう泣く)

サムとルーシーは超仲のいい父娘として暮らします。それこそお互い子どもみたいにキャッキャしながら。ところが。ルーシーが7歳くらいになると学校の話とかで「パパ、これはどういうことなの?」みたいな好奇心旺盛な質問をするようになります。サムは知能的に限界なので「えっと……そんなことよりいつもの絵本を読もうよ」みたいになる。ルーシーは天使的にダイヤモンドなので「あっ……(察し)。絵本たのしいね」ってやってくれるんですがだんだんパパに不満をぶつけるようにもなっていきます。(ここでまた5回くらい泣きます)

サムも7歳おじさんなりに色々考えます。近所に住んでる対人恐怖症のおばちゃんに「ルーシーには母親が必要だ」とか言って話し相手を頼んだりします。あと友人の知的障碍者グループで一緒に誕生日プレゼントを選んでみたりします。友人たちに「毎週何曜日は映画をみんなで見る日って何年も前から決まってるだろ」「サム約束を守れ」とか言われながら。(この辺で幸せそうなアビイロードのジャケ写のパロディが入ったりしてまた泣きます)

こんな感じでうまいことやってきたんですが、サムはやっぱり7歳おじさんなのである日そういう施設から「お前は養育能力ないから施設で引き取るわ」というお役所的な通告をされてしまいます。そんで色々あってルーシーは別の里親に引き取られることになります。サムはバチボコにヘコむんですがどうにもできません。(ここでブログを書いている僕が1回泣きます)

そんな感じになってからもサムはルーシーにちょっとでも会おうと色々頑張るんですが、里親の母ちゃんから「そういうのやめてくれへん」とたしなめられて「せやな……」ってなります。でもルーシーがあまりに「パパ……」ってなるので会うことを許します。ほんで久しぶりに会います。その時のシーンがむっちゃ好きなのでそこだけ書きます。(この辺正確にどうだったかを確認しようとして今軽くDVD見たら5回泣きました)

サムと久々に再会したルーシーはまずブチギレます。「なんで会いに来なかったの」「私のことはもう忘れちゃったんでしょ」と。でもそういう突発的なことに対処できないサムは事前に手紙を書いてきていました。そこで読み上げるのがルーシーのことをいつも考えていること、空の上にいるダイヤモンドのようなルーシーのこと、そして「P.S.アイラブユー あの歌のように君を愛しているよ」というビートルズの歌になぞらえた不器用な言葉でした。(ここで全人類が泣く)



本編では他にも子供と不仲の仕事バリバリ系弁護士女性とのエピソードとかサムと陽気な仲間たち(実際に知的障害の人も出てる)の絶妙なやり取りとか見どころは多いんだけど、そうしたディテールの素晴らしさがこの映画を好きな理由なのであとは観ていただきたい。ビートルズのことしかわからない不器用なサムと、それを優しく包み込むように全編に流れる様々なアーティストによるビートルズカバーのBGMがこの映画にはあります。「感動ポルノなんかダセー!」と思ってる僕をP.S.アイラブユーのさりげなさでそっと溶かしてくれるところが好きすぎて僕はこの映画が人生で一番好きな映画だと言うようにしています。