たろちんの感情の奴隷ブログ

やむを得ず社畜と化したたろちんが、お金にならない文章を思いついたときにだけ更新されるプレミアブログです。

マヂカルラブリーを絶対に許さない

もう皆さん今年のM-1のこととか忘れたころかと思います。せいぜい「シャケと牛肉どっちが勝ったんだっけ?」くらいのもんでしょう。よかったですね。僕はいまだに引きずっています。マヂカルラブリーとかいう大好きなコンビが最大の晴れ舞台で大人にめちゃくちゃ怒られたせいです。

僕は数年前に友人のすすめでマヂカルラブリーを知ってめちゃくちゃ気に入って推してきた者で今年のM-1を結構楽しみにしていました。それは期待でもあるけどそれ以上に不安でもある「何が起こるんだろう」という気持ちでした。とりあえずなんか起こるだろうとは思ってたわけですが、起きたのがアレですよ。上沼恵美子に叱られて野田くんが服脱いでスベった瞬間から僕の記憶は壊れており、今は「シャケと牛肉どっちが勝ったんだっけ?」みたいな状態です。壊れてしまった人

マヂカルラブリーが色々考えて決勝であのネタをやったんだということは、そんなに古参ファンでもない僕でも想像できます。でも、あれで「つまんね」って言われるのはやっぱり本意じゃない! 許せない! マヂカルラブリーのバカ! ってなって寝込んで僕は翌日会社を休みました。日本で5人くらいいたであろう「マヂロス」になった者です。

ということで愛ゆえにメンヘラの元カノみたいになった僕が今から「マヂカルラブリーのどこが面白いのかを丁寧に解説する」という、芸人に一番やっちゃいけないことをします。恨むなら恵美子を恨んでください。

1、つかみが面白い

マヂカルラブリーの魅力は一言でいえば「狂気」なのですが、最も端的に表しているのがつかみの挨拶です。
基本パターンは「村上でーす」に対して本来は「野田でーす」と言うべきボケが「その残像でーす」「でっかいエビでーす」「なにぃー!?」などと続き、村上の「マヂカルラブリーです」にもそれらの言葉をかぶせるというものです。村上があわせやすいようにゆっくり「マ、ヂ、カ、ル、ラ、ブ、リ、ー、です」と言ってるにも関わらずわざわざ同じリズムでゆっくり「エーービーーです」みたいに言うちぐはぐさが面白いところで、ファンは「今日の野田でーすは何かな?」などと楽しみにしています。面白いですねえ。

この「漫才の基本パターンを壊す」は多くのコンビがやってる手法で(「とろサーモンでーす」「僕もです」など)、マヂラブの狂気の中でもかなり王道の部類だから本番でもやってほしかったんですが、準決勝くらいから置きに行って「野ーー田ーーです」に戻してしまいました。あと村上の「マヂカルラブリーです」も緊張なのかあえてなのかわかりませんがテンポが速くていろいろもったいなかった気がしました。

2、フリが面白い

漫才の入り方は野田くんが「〇〇がしたいよー」などと急に叫ぶというものです。それに対して村上が「なんだって野田くん、そしたら今日は僕が〇〇をやるから~」などとフリを始めるのですが、それを無視して野田くんが「俺に、話しかけるな」とか好き勝手な言葉をかぶせていき、フリを喋り終えたところで野田くんが「セイッ」とネタに入るというのが定型です。面白いですねえ。



あとはフリにあわせて野田くんがその特質系なボケを披露してはツッコまれるのですが、ツッコミの最中もふざけていたりネタに戻る際も「太ってるねー」などと関係ないことを言ってたりと一切まともに絡まないというのがよかったです。最近フリで普通にちょっと会話しちゃったりするのですごい違和感があります。でもそうやってスタイルを微修正したおかげで決勝に出れたというのもあるんだろうなあとは思います。

3、実はツッコミも狂ってる

野田光だから芸名が「野田クリスタル」というのはわかりやすい狂気なのですが、実はツッコミは本名が鈴木崇裕で芸名が「村上」です(下の名前とかない)。タカトシのタカの本名と被ってるから芸名は変えた、ということらしいんですがこの芸名ひとつを見てもわかるようにツッコミもまともそうに見えて実は全然おかしいです。

昔のM-1敗者復活戦でやってた「いじめっ子になりたいよー」のネタとかもそうなんですが、村上の「じゃあ野田くんは僕をいじめちゃって!」というフリとか「言えよー、悪口!」っていうツッコミとかいろいろ根本的におかしい言い回しがマヂラブの世界観におかしみを生んでいます。普通なら野田くんの強烈な狂気を制御する役回りなんだけど、村上もある程度受け入れちゃってて一部ツッコミ不在になってる。相方が明らかにイカれてるのに「ダメだよー」みたいになぜかわりと優しい。ということはツッコミも結構狂ってるわけです。

笑い飯の「ダブルボケ」ならぬ「ダブル狂気」こそマヂラブの魅力で、この妙なズレに快感を覚えるとマヂラブのことが好きになります。今回の決勝でも「野田ミュージカルが行われるんだけど……見てく?」「……見てく」みたいなやりとりとかはその片鱗があってよかったです。

4、大体のネタは尻すぼみになる

渡辺リーダーとかもネタの展開の幅を指摘してましたが、今回みたいにずっと「客じゃねーか」のボケ1本で押すようなネタがマヂラブは非常に多いです。



昔話にスサノオノミコトが出てくるネタとかめっちゃ好きなんですけど、最初のボケの「うさぎとかめとスサノオノミコト」がすごい面白いだけに2個目の「スサノオノミコトと3匹のこぶた」が同じパターンでちょっと弱い。野田くんのインパクトが強いだけに見てるほうはやっぱりより強い裏切りを期待しちゃうとこがあると思います。

それでも「野田ミュージカル」という野田ありきなネタで勝負に行ったところは、「俺達にはこれしかない」というマヂラブの勇気であり今回の決勝に賭ける思いだったんじゃないかと思います。「同じボケを何度も繰り返す」というのもある種の狂気であり変に伏線を回収したりするネタを始めたらせっかくの狂気がかすむ気もする。「繰り返しの狂気」はハマればものすごい爆発をするし(某にゃんこなど)、マヂラブの戦い方としては正しい路線だったのかと思います。失敗はしましたが。


などなど、上空4000m目線で好き勝手言いましたがただのお笑い好きとして僕が一番悔しかったのはやっぱり「マヂラブが置きに行ってM-1に出たこと」でありそれを見て「つまんね」って言われたことに他なりません。ロン毛でタンクトップ着て「ジーパン破れすぎ君です」と言ってた野田くんのギラつきに惚れた者としては、スーツと筋肉をまとって「野田です」と言ってるネタだけを見て恵美子に公開処刑されるのは我慢ならんのじゃとなるわけです。

「あれはむしろおいしかった」という意見はよくわかるし、マヂラブの2人も早速ネタにして上手く立ち回っててよかったなと思います。でもやっぱあの瞬間の2人の落ち込みは相当なものがあったと思うし、僕も「決勝に出るためにいろいろ捨ててきた結果が『なんで決勝上がれたかわかんない』ってなんだよ! 泣くぞ!」ってなんか勝手に共鳴してしまって気絶したわけです。アイドルのコンサート会場とかで異様に感情移入してるヤバイ人とかいるでしょう。あれが僕です。

僕はディープに劇場とかに足を運ぶお笑いファンでもなんでもないし、たまたま「僕は好きだけど賞レースとかで決勝に来ることなさそうだな」と思ってたコンビが初めて大舞台に立って興奮して見てて無事爆死しただけなのですが、それによってマヂカルラブリー絶対許さない君に悪魔進化してしまいました。今後もマヂラブを見るたびに「あ、爪あとを残してくれるのを期待してたら傷あとをつけられた人だ」と思うでしょう。僕をこんな体にしたマヂカルラブリーを、売れるまで絶対に許しません。