たろちんの感情の奴隷ブログ

やむを得ず社畜と化したたろちんが、お金にならない文章を思いついたときにだけ更新されるプレミアブログです。

電王戦第2局の「やねうら河内守」問題に関する私見

第3回将棋電王戦がついに始まってひふみんばりにウヒョーと興奮していた僕ですが、第2局を前にしてソフト側のルール違反ではないか、という問題が色々と炎上しているのでちょっと私見を残しておきたいと思います。なお、色んな人がそれぞれの理由で叩かれていますが、僕は「将棋ファンが熱くなるのが一番悪手」という立場。結局、叩くほどリアルガチで観ちゃうのはよくも悪くも将棋ファンだけだと思うので。

一応、超簡単に炎上の経緯を説明するので、知ってる人は真ん中まで飛ばしてください。

昨年11月にコンピュータ将棋のトーナメントで「やねうら王」というソフトの出場が決まる

ドワンゴ棋士に練習してもらうからもうソフトの内容変えちゃダメね。このルールは絶対」

やねうら王「バグあるからそこは直したい。強さは変えない。なお完成は本番直前になるもよう」

ドワンゴ「おk」

対局者のサトシン「超強くなったじゃねえか。開発者は嘘つきのクズ(激おこ)」

ドワンゴ「マジかよ。でも今更だし……あっ、そのへんPVでプロレスっぽくしちゃおう(名案)」

炎上

これはもちろん事実と異なる悪意のある書き方だけど、流れの中でこういう細かい誤解が積み重なって炎上に発展したんじゃないかということです。で、今日その誤解を解くための説明ニコ生がありました。詳しくは別途他サイトの記事などをどうぞ。
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1403/19/news119.html

叩かれポイントとしては大きく3つあって、
ドワンゴが自分で決めたルールを自分で改変認めたのがクソ」
「やねうら王がバグを口実に明らかにソフトを強化する改変をしたのがクソ」
「悪ふざけみたいなPVで煽った上に滑ったのがクソ」
みたいなことです。ざっくり。包括して「将棋連盟が全体的に無能」と見る人もいます。

で、ここからやっと本題で、釈明会見や各種ブログを見て僕が思ったのは「しょうがないじゃん」ということ。あるいは「誰も悪くないじゃん(悪くないとは言ってない)」ということ。ちょっとずつそれぞれの事情がある。

やねうら王開発者は結果として明らかなルール違反である、「ソフト提出後の強化」をやってしまったわけで、それを指して「やねうら河内守」などと揶揄されているけど、最初から彼の独特のキャラクターはみんなわかっていた。むしろそれをニューウェーブとして歓迎していたんだから、今更それを叩くのはファン的にも手の平クルーな面がある。そのへんの超えちゃいけないラインはドワンゴが管理すべきだけど、スポンサーの多数ついた興行主として「バグでフリーズして盛り下がってもいいの?」と言われたらこっそり特例を認める気持ちもわかる。というかあらゆる興行でそういうことは多少なり行われていると思う。そして、そうした不正に誰よりも高潔なサトシン、ならびに将棋ファンが「リアルガチじゃねえのかよ」と怒るのもわかる。これらの気持ちを代弁して炎上を未然に防ぐべき将棋連盟側にコンピュータ将棋を理解する専門家がいなかったために、結果的に大事になってしまったんだと思う。炎上した結果、「やっぱ最初のバグありソフトでやります」となったけど。

炎上というのは民意によるもので、この場合の民意とは「将棋ファンの怒り」だから、「ライト層に向けたエンタメをやりたいドワンゴ」と「プライドを懸けてガチ勝負をしたい将棋連盟」の間にズレが起きた時に、ドワンゴややねうら王が悪者になりがちなのはしょうがない。ただ、今日の会見でサトシンが「怒ってるのでPVに経緯説明を入れてほしい」って言ったということがわかって、やっぱ誰が悪いとも言えないなと思った。既に完成してるPVを突貫工事で変えるのはそんなに簡単ではないし、プロレス演出は外注先のPV制作者のとっさの案かもしれない。将棋界がこういう様々な人間が関わる大イベントに慣れてないってのもやっぱり大きな一因なんじゃないかと思いました。

僕は将棋界や棋士のそういう垢抜けていないところが非常に好きなんだけど、ファンの中には「伝統!」とか「もう将棋界を食い物にするドワンゴと関わるな!」みたいなこと言う人もいて、それはちょっと違うかなと思う。将棋界のメインスポンサーである新聞社が苦しい以上、こういう普及・広告効果の高い新規参入は歓迎すべきだと思うのが普通。僕も含めたそういうライト層と共存するか、住み分けするかは難しいけど、そのへんは棋士のほうがファンより柔軟に対応してると感じる。そういう理由で「将棋ファンが熱くなるのが一番悪手」だと思います。

余談だけど、羽生さんの「将棋は他力」という言葉にあるように、中終盤でのわずかなミスが勝負を左右するのが将棋の面白さで、それはスポーツと同じドラマ性がある。コンピュータ将棋の中終盤の強さは、ゴルフで言えばグリーン上のパットなら必ず決めるジャンプ漫画みたいなやつが現実に現れたようなもんだけど、そいつにまだ人間が勝ち負けできるというのは非常に興奮できる貴重な時期。なので、観る将棋ファンの僕としてはアホみたいに盛り上がって楽しむのが最善手なのかなと思います。